凍れる北の街
![]() |
| 「きゅっ、きゅっ」と雪を踏む音が懐かしい |
北海道の病院に入院している母の様子を見てきた。高齢の母は、身体を動かすことはおろか、今では喋ることも、意思を伝えることも、ほぼできなくなっている。会いに行ったときも、見た目はずっと寝ている感じ。ただ、こちらからの声かけに閉じている目をわずかにぱちぱちさせたりと、微かな反応が見られた。あれが本当に反応だったかは分からないが、自分はそうであると信じたい。ただ、一方でそんな状態になってまで病院のベッドに寝かされている母の姿がなんとも痛々しくも感じた。母は、どう思っているのだろうか。
もともと母は、とてもおしゃべりで芯がしっかりとした気丈な昭和の母だった。また、孫ができたときもそうだったし、ひ孫ができたときも大変喜んで、自分が送ったひ孫の写真をいつも周りの人に自慢していたそうだ。そんな母も齢を重ねるごとにだんだんと弱くなってきて、この一年の間に言葉を発することができなくなった。そんな母の姿を見て、縁起でもないが、いよいよ覚悟をする時が来たのかなとも正直感じた。
人は誰しも老いる。これは曲げようもない事実だ。これは母に限ることではなく、自分もそうだし、娘も、孫も、もしかしてそのあとに続くかもしれない子孫たちも。そんな流れの中では、人の一生とはとても儚いものかもしれない。でも、母には母の一生があり、その中には、息子でも知ることのない経験が沢山あったはずで、その中で様々な感情や決断、行動があったはず。つまり、それぞれ人の一生とは言葉に代えることのできない重い時間の積み重ねだと思う。母は今、人生を振り返り、面会に訪れた我が子に何かを語りかけようとしたのかもしれない。自分は母の言葉に応えられているのだろうか。
そんなことを考えながら、面会後、人影のない凍れる北の街で帰路に就いた。

コメント
コメントを投稿